白川郷・五箇山の合掌造り集落 コラム 白川郷・五箇山の合掌造り集落 コラム

白川郷・五箇山の合掌造り集落 - コラム -

「お互い様」と「ありがとう」の循環

結(ゆい)の精神に学ぶ助け合いの暮らし

結(ゆい)の精神に学ぶ助け合いの暮らし 結(ゆい)の精神に学ぶ助け合いの暮らし 写真提供:岐阜県白川村役場

白川郷や五箇山の茅葺き屋根の葺き替えを大勢で作業する様子を、ニュースなどでご覧になったことがありませんか?
茅葺き屋根は、植物を束にして屋根に使用しているため、屋根の大きさにもよりますが、葺き替えるときには相当の人手が必要です。
この作業は「結」という日本の中部地方の合掌集落に残っている共同労働体で行います。沖縄にも「ゆいまーる」(結い・回る)と呼ばれる協同の習慣が残り、昭和初期には日本各地でも「隣組」という組織がありました。今回は、人々が助け合って暮らす制度、「結」についてご紹介します。

冬の間の数ヶ月間は、雪に閉ざされてしまう白川郷・五箇山の合掌集落は、各集落が孤立を余儀なくされる厳しい自然条件であることから、家族や村人同士の結束が強まりました。豪雪地帯の山間部の村では、家が単独で生活を維持するのは大変困難であったためです。
そこで様々な暮らしの場面で「結(ゆい)」と呼ばれる制度の助け合いが築かれていきました。その起源は、鎌倉時代から普及し始めた浄土真宗に遡ると言われています。仏教用語にも、「ある目的で集まった人々」という意味の「結衆(けっしゅう)」という言葉が現在も使われています。

「結」とは、労働力の貸し借りをする社会制度で、提供された労働には同量程度の労働を返す、という労働交換のこと。
田植えや稲の刈り取り、材木の伐採などのほか、大きな行事としては合掌造りの屋根の葺き替え作業があげられます。

屋根の形が合掌した時の手の形に似ているところから「合掌造り」と呼ばれる家屋は、勾配が急な茅葺きの切妻屋根であることが特長です。積雪が多く雪質が重いというこの地の自然条件に適合するよう、雪が落ちやすく、かつ雪の重みに耐えられる、このような構造になりました。
茅葺きの材料・茅については、茅という植物があるのではなく、ススキやチガヤ、葦(よし)などの草で、それらの総称を「茅」と呼んでいます。(調達事情により、稲わらを使用したものもありますがこちらは寿命が短いようです)
合掌造りは保全のために、大規模な補修や屋根の葺き替えを30年~40年に一度行う必要がありました。その上、この茅葺き屋根の厚さは約1mにもおよびました。一本一本は細い茅をどれだけ集めたのでしょう?その際は、各家で蓄えた茅を持ち寄り、住民数百名が集まって作業を行っていました。
このような重労働の葺き替えを手伝ってもらうお返しに「次の葺き替えを手伝う」という思いが、「結」として形となり、助け合いは存続しました。相手を思いやる気持ちが住民たちの絆を深め、合掌造り集落は守られてきたのです。


写真提供:岐阜県白川村役場

その上、戦後の経済発展過程で集落の集団離村などが起こり、「合掌造りを保存しよう」という住民の意識は一層強まりました。白川村では、地域の資源を「売らない」「貸さない」「壊さない」の三原則を掲げ、保存運動を展開しました。そしてついに1995年に「白川郷・五箇山の合掌造り集落」として世界遺産に登録されました。

しかし近年は、交通網や通信手段の近代化によって村の生活も大きく変わりました。また、茅葺き職人の不足や過疎化、高齢化による人手不足などで、作業を実行する困難さも増しました。
そこで、保存地域では、財団法人が広く寄付を集って活動を助成したり、葺き替え作業や草刈りのボランティアを募集したり、村では古民家の改修ワークショップを行ったり、と現代版の結につながる様々な活動を計画しています。
また、世界遺産登録により観光業に従事している住民たちも、村の伝統行事の日は仕事を休んで参加し、住民皆で「結」を忘れず、交流を深める村づくりを行っているそうです。

こうして、住民が「結」の絆で守ってきた伝統的集落ですが、その一方で、近年の観光客増加に伴う新たな問題も起きています。
歩きタバコを行う、住宅の戸を勝手に開ける、ゴミを投げ捨てる、草花を折るなど、マナー違反も残念ながら散見されています。合掌集落は過去の遺跡ではなく、今も人々が暮らす生活の場であることを忘れてはなりません。村の生活を守ってこそ、世界遺産の地を訪問する意義があるのではないでしょうか。

「結」は、厳しい環境を生き抜くための「お互い様」と「ありがとう」の循環です。
村の人々と共に、世界遺産を守る心構えとマナーをもって現地を訪れたいものです。

音声ガイドでは、白川郷・五箇山の見どころに加え、合掌造りの白川郷の「和田家」や五箇山の「岩瀬家」をご紹介しています。ぜひ、アプリとブックをダウンロードしてお試し下さい。

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